Festival Report フェスティバル レポート 2023

恐るべしサブリミット / サブリミット

 本番開始20分前。逆立ちからのブリッジと入念なストレッチを行うガッツとヨーコはアクロバットアーティストだ。

 「アクロバット」と言うと全身を使った難解な技を想像するが、実は誰もが一度は経験したことがあるだろうでんぐり返しも立派なアクロバットなのだ。

 本番開始10分前。

 突然始まったヨーコによる正しいアクロバット(でんぐり返し)レクチャー。生きていて何か嫌な事があった時。そんな時はくるっと回るといいらしい。

 手はウサギさんの耳、頭は後頭部が地面につくように回る事がコツだと二回のお手本披露。完璧なでんぐり返しに観客の視線が釘付けになる。

 正しいアクロバットを学んだ所でいざ実践!観客の中から一人選ばれたのは、勇敢な足取りが特徴的な眼鏡をかけた男の子。くるっと一回ひと回り・・・大成功!と余興を楽しんだ所で本番が開始した。

 鍛え抜かれた体幹の最強ペア、ガッツとヨーコ大道芸ワールドカップin静岡2001にてジャパンカップ部門での優勝経験があり、現在も世界20ヵ国で公演中の大ベテラン。アクロバットだけでなく傘回しにこま回しと器用な指使いで和のサーカスを演出する。



 コマを使った大技「風車」ではガッツ、眼鏡を装着。やかんと湯吞みを使ったテーブルクロス引きではガッツ、頭がテーブル代わり。

 最終日ともなると頭の滑りが悪くなるらしく今朝バリカンで頭部をそってきたのだという。プロ意識恐るべし。

 最終項目アクロバットは息を吞むようなパフォーマンスであっと言う間に時間が過ぎた。サブリミット恐るべし!

(えび)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/05 04:06 PM

観られたら超ラッキー☆「りずむらいす」の世界 / りずむらいす

 大道芸ワールドカップ最終日の駿府城公園会場は歩くのが大変なほどの人出だった。

 りずむらいすがパフォーマンスを行う「SBSどき!どき!ランド」のポイントはさらに人でいっぱい。開始前からびっくりするほど多くの観客がステージを囲んでいた。

 「パフォーマンスが始まったらもっと観客が集まるだろう。こりゃあえらいことになりそうだ」と思いながらステージが見える場所に移動すると、りずむらいすの2人が準備を行っている様子が目に入った。

 その直後。りずむらいすは突然白いボックスの上に座り、リズミカルにボックスをたたき始めたではないか。



 「……あれ?もうパフォーマンス始まってる?」と思った瞬間、彼らの口から「準備運動」という言葉が飛び出した。「あ、まだ準備中でしたか……」

 続いて、「準備運動」の一環らしい観客との手拍子の練習が始まったが、何度練習してもりずむらいすと観客とのタイミングが合わない。そのたびに「蛍の光」が流れて退場しようとするりずむらいすを観客が歓声で止めるる一幕もあり、観客全員が「りずむらいすの世界」に飲み込まれていく様子が見て取れた。

 その状態からスタートしたパフォーマンス本番は「うかつに鳴らすと大爆発するベルの起爆装置を解除するミッション」から始まった。片方の頭にくくりつけたベルをもう片方が「スイカ割り」方式で鳴らしたり、細い棒で独楽(こま)を移動させてベルを鳴らしたりするミッションは次々と成功。

 起爆装置が解除された8つのベルと小太鼓で「ボレロ」の演奏が始まるころには観客全員がステージにくぎ付けになる。そのまま超迫力の和太鼓演奏が行われ、華々しくステージの幕が下りて空気が震えるほどの大きな歓声が沸き上がった。





 事前の情報でりずむらいすの高い評判は聞いていたが、実際に彼らのパフォーマンスを見て深く納得した。

 本大会中にりずむらいすのパフォーマンスを観られた方は超ラッキー。残念ながら観られなかった方は次のチャンスに請う期待。来年のこの時期にりずむらいすが来たら、その時は彼らのパフォーマンスをぜひお楽しみいただきたい。

(広報スタッフA)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/05 03:55 PM

エンターテイメントを愛する兄弟 / 桔梗ブラザーズ

 カラッと晴れた秋空の太陽が、宙に舞うクラブのコーティングに反射し煌びやかな軌道を描く。

 23年のジャグリング歴によって築き上げられた彼らの高い基礎力と経験値は、ジャグリングにとっての大敵である逆光すらものともしない。

 今は動画サイトなどでも、ジャグリングというコンテンツに触れる事はできるが、彼らが生でパフォーマンスを見る価値を大切にするのは、こだわりぬいたスピード・精度・テンポのジャグリングが放つエネルギーと、アーティストとしての熱い魂を観客に肌で感じてほしいからだろう。

 高度な技の数々が繰り広げられても、それで観客が疲れてしまわないように一息つく間まで用意している。魅せるすべてがトップレベルの彼らだが、そんなアーティストとしてのショーの立ち振る舞いが完成されているのは、桔梗ブラザーズがジャグリングを始めたきっかけにあるのだと思う。



 彼らは横浜で大道芸を見て、アーティストになる事を志した。始めて触ったジャグリング道具は2人が得意とするクラブではなく、兄はシガーボックスとデビルスティック、弟はディアボロだという。

 少し経ってからクラブジャグリングを2人で始め、その後のジャグリング全国大会でパフォーマンスを披露した事で、改めて人前で演じる事の魅力と喜びの虜になったという。それから更にジャグリングにのめり込んでいき、アーティストを夢見る少年だった2人は世界屈指のアーティストになるに至った。

 かつて2人がアーティストを志すきっかけになったあの感覚を観客に届けたい。

 生で見る価値を大切にしている桔梗ブラザースの表情は、宙に舞うクラブと同じように煌びやかに、そして楽しさに満ちていた。



(写真・記事/つばさ)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/05 03:39 PM

Heromacro Show! / Heromacro

「ARE YOU READY!?」
「YEAH!!!」

 大道芸ワールドカップin静岡2023、最終日。拍手と笑い声に気を引かれ、駿府城公園に足を踏み入れる。

 人々の視線の先には、はっぴを身にまとい、力強い演技を魅せる2人の姿が。ヒロとマコが繰り広げる世界レベルのアクロバット、Heromacroだ。

 2人の組み合わせ技、圧巻。皆さんがイメージされる、男女デュオのパフォーマンスとは一味違う。

 なんと、女性のマコが男性のヒロを支える形で技が繰り広げられるのだ。華奢な体で力強く演技を支えるマコ。彼女の姿から、誰もが目を離せない。

 空を見上げて深呼吸。心の準備は整った。ヒロが大技を披露する。

 ここでは、この技についてあえて記述しない。そこで何が起こるのか、自分の目で確かめてみてください。

 2人のパフォーマンスは、観ている人も主役になれる。観衆から選ばれた人が、Heromacroと一緒にアクロバットを体験できるのだ。大人の上を逆立ち歩き、子供の股の下を逆立ちでくぐり抜ける。

 演技が終われば、拍手喝采。参加者の笑顔はピカイチだ。観客をまるでアーティストのように輝かせる2人の演技、それはまるで魔法のよう。

 今回、日本でのパフォーマンスは2回目のHeromacro。初めての大道芸ワールドカップin静岡2023を「静岡、最高!」と振り返る。静岡の人々を笑顔にし、世界へ旅立つ2人の背中はとても凛々しかった。



(記事/なな、撮影/田中)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/05 03:34 PM

烈火の申し子 / 火付盗賊

 午前11時。駿府城入口すぐ横で、音楽が流れている。

 観客は待ちきれない様子を抑えながら、ここだここだと陣取り合戦の真っ最中。そこに姿を現したのが、このパフォーマンスの主役である達人4人衆 火付盗賊。その服装は、いかにも"盗賊"という言葉が似合いそうな、民族的なもの。

 最初は穏やかなジャズ調に合わせて火が踊る。しかし見せ場が始まると、音楽が切り替わってテンポの速いEDMが鳴り響く。白かった煙は黒みを増し、柔らかい動きから、キレのある動きに変わる。その様子は、さながらバレエからブレイクダンスへ変身したようだ。



 真っ赤な炎でできた扇が、観客の目の前で美しく舞う。みんな扇にくぎ付けになり、歓声と拍手は止まることを知らない。

 そうして繰り広げられているところで、後ろから火刀を持った侍ふたりが登場。互いの腕は互角で、なかなか決着はつかない。
猛火のつばぜり合いで文字通り火花を散らす一騎打ちの結末やいかに?

 「見てくれたお客さんの心と目を"盗める"ような活動を目指している」 グループのリーダーおよび創始者のNORIはそう語る。「静岡公演を見てくれるお客さんは反応が良く、パフォーマンスのやりがいを大きく感じる」そうだ。

 昼間パフォーマンス中は太陽光が大きく影響してしまう。代わりに夜公演のSparkでは、日没が重なることも相まってかなり特別なショーが見られるとのこと。こうなったらもう目が離せないだろう。



 力強い動きと共に、常に表情を変える火柱の様子を見たら、誰もが必ず息を吞むことを確信している。

(Written by つーさん)
Photos by Shinohar(写真は夜間のパフォーマンスで撮ったものです)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/05 03:17 PM

弾ける二人組 / idio2

 シルクハットの似合うHi2さんと、素敵な笑顔のこーすけさんのふたり組のidio2はおしゃれなスーツで登場し、ユーモラスなコメディーで会場を沸かせていました。

 多くのお客様を巻き込み、ペットボトルを足から頭に乗せたり、コップを上手くまとめたりとハラハラの連続で、見ているこちらも手に汗を握る思いで見ていました。

 空のカバンなのに動かないパフォーマンスに、子供たちが「なんでだろう?」と頭をひねるリアクションがあちらこちらで見えました。また、子供たちの活躍も素晴らしく、中にはidio2よりも笑いを取るようなこともあり、何が起こるかわからない会場は笑いの渦に巻き込まれていました。

 ちなみに二人が着ていたスーツのデザインはHi2さんが考えてデザインをされたそう。そういえば、おしゃれだけでなく、動きやすく機能的でした。

 元々はソロで活動していた二人がともにコンビを組んでから数年が経ちましたが、パフォーマンスの内容については「互いがやりたかったものが合わさってできた」とのこと。うまく行くコツは「その場で互いに考え合わせていく」とのことです。

 写真撮影を待っていた中に、マイジャグリングボールを持ってきて日頃の成果を披露していたお子さんがいました。こ~すけさんが「俺よりうまいな。俺もうかうかしていられないな。」と激励の声をかけていて、ぜひこのような将来のアーティストさんがたくさん出て来てくれることを切に願います。 



(たか/photo by H.Suzuki)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/04 08:12 PM

ちいさな面白さが作る大きな輪 / ふくろこうじ

 遊びや失敗は誰でもするし、共感しやすい。そんな事が楽しければ、見ている観客も楽しくなる。

 クラウンのふくろこうじのショーは、実に不思議な感覚に陥る。

 何かに失敗したり、身近にあるもので遊んだり。そんな誰もが経験した事が彼のショーではたびたび起こるが、たったそれだけの事が笑いに変わる。



 当たり前のような事に面白さを見出し、そこにあるちいさな面白さを拾い上げ大きくしていく。クラウンというのは、そんな普段目につかないような面白さに気づき、そこを追求してしまう存在なのだろう。

 そんなクラウン、ふくろこうじの面白さをかぎつける嗅覚は抜群で、彼のショーでは本当にちっぽけな入口からバラエティ豊かに笑いの世界が広がっていく。

 彼が日常で起こりうる全ての現象に面白さを見出し、追求してきたからこそ彼の一挙一動に観客は共感し、そして笑う。

 言葉を発せずともステージに立つふくろこうじはいつでも感情をカラダに翻訳して、彼を囲む大勢の観客に語りかける。

 「これでも食らえ!」

 そんな少年のように無邪気なふくろこうじは今日も、今日もステージの上で新たな面白さを見つけて遊び続ける。



(記事/写真 つばさ)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/04 06:53 PM

ブレイクダンス!筋肉!そして絆! / しょぎょーむじょーブラザーズ

 リズミカルな音楽と人々の手拍子が駿府城公園に鳴り響く。観衆を掻き分けていくと、中心には自信に満ち溢れたキラキラ笑顔のハンサムな男性2人組が。

 くるくると軽やかに舞うブレイクダンスエンターテイナー、しょぎょーむじょーブラザーズだ。

 2人が顔を見合わせ頷けば、大技が繰り広げられる合図。2人の体を支えるのは固く結ばれた手。汗滲む手から練習で築かれた強い絆が感じられる。

 地面すれすれで体をぴたっと止め、「うぉぉぉぉ!」と叫べば、観衆の目がきらきらと輝き、大歓声。組体操の次元を超越した「無重力アクロバット」は一番の見どころだ。

 メンバーのToshi-Rock、HIRONAGAが魅せる世界レベルの「スーパーブレイクダンス」はもちろん、この2人組は筋肉好きの人にもおすすめ。

 服を脱ぎ捨て、観客席にやってきます。迫りくる筋!肉!日々のトレーニングで鍛えられたこの体は努力のたまものだ。

 「盛り上がる準備はできているか!!」と問いかければ、観衆から大きな拍手が。

 パフォーマンス後には、観ていた子供達から「私はこっちのお兄ちゃんが好き♥」との声も。この2人組、ちゃんと静岡の人々の心を盗んでいきました。

 しょぎょーむじょーブラザーズのパフォーマンスは何組のアーティストを観ているかのように、1秒たりとも飽きさせない。最終日は港町、清水にこのアツい2人がやってくる。

 2人が繰り広げる、まさに諸行無常なパフォーマンスをとくとご覧あれ!



(なな)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/04 06:45 PM

高所から届ける圧巻のパフォーマンス! / アスタリスクノヴァ

 どんどん高所へ上り、より難易度の高いパフォーマンスを披露していく様子に観客皆が釘付けになってしまう。全員が一つになって楽しみ、緊張し、喜ぶ。

  「その場その場の自分たちの楽しい気持ちがお客さんに伝わったらうれしい」

 危険なパフォーマンスを真剣な表情でこなしていく様子も、そんな中で伝わる楽しそうな様子も、その名の通りキラキラと輝く笑顔もすべてが彼らの魅力だった。



 ダイナミックなアクロバットで観客を魅了していくアスタリスクノヴァ。強靭な肉体と並外れたバランス感覚を持つTakuyaに、体操競技で活躍し続け高い身体能力を持つSaika。2人の長所と経験をフルに生かしたパフォーマンスは場を圧倒する。

 ダイナミックかつ足先まで意識された技の繊細さはこだわりの一つ。演じる中で成長していく彼らのパフォーマンスは一瞬たりとも見逃せない。



 地面から離れた高所で華麗なパフォーマンスを繰り広げる。その光景は、ハラハラ、ドキドキ、ワクワクでスリル満点の大迫力! アスタリスクノヴァの成長し続けるパフォーマンスをとくとご覧あれ。

(記事/はぎ 写真/つばさ)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/04 06:40 PM

高度なテクニックで観客を魅了するフープの妖精 / HOOPER MAEP

 大道芸ワールドカップ2日目のエスパルスドリームプラザ会場は、清水港の青い風景がとても美しかった。

 そんな風景の中に突然鮮やかな黄色の衣装に身を包んだ「妖精」が現れた。本大会初出場の「HOOPER MAEP(フーパーマエピー)」氏だ。

※演技の途中でご本人が「『まえぴ~』って呼んでくださいね☆」と言ったので、ここからは彼女のことを「まえぴ~さん」と表記します。

 冒頭で2つのフラフープ(以下、大小ともに「フープ」で統一)を使った演技を開始した、と思ったらそれをひとつにつなげて巨大なフープに。それを腰で回した後両手であごに乗せ、最後はあごだけで巨大フープを支え始めたではないか!

 そこで観客席から大きな歓声が上がったのは言うまでもない。その華奢な体とあごで巨大フープを支えちゃいますか!なんというバランス感覚。お見事!と感嘆のため息が出た。



 続いて、4つのフープを手や足でひとつずつ回し始め、最後は両手両足で一度に回す凄技を披露。観客席からひときわ大きい歓声が上がった。

 その後、大小のフープを使った観客参加型の楽しいパフォーマンスが続き、みんなが「まえぴ~ワールド」に引き込まれていった。それだけでも十分楽しめる内容ではあった。

 しかし真の本番はそこからだった。

 まず、ご自身が「今の限界」と考える8本同時のフープ回しが成功。続いて黄色いドレス姿のまえぴ~さんが、黄色の布つきフープを回して青空に映える美しい景色を見せてくれた。

 そして、最後は大量の虹色フープをじゃばらのように広げる華やかな演技で締めくくり、しばらく観客席から拍手と歓声が鳴りやまなかった。



 まえぴ~さんのフープパフォーマンスは、素人から見ても非常に高いテクニックを要するものばかりだ。だから広報スタッフA(以下、「A」)は彼女を「プロとしての芸歴が長い方」だと思っていた。

 しかし、ご本人によれば、「脱サラしてプロパフォーマー一本になったのは去年の春」とのこと。にもかかわらず、すでに2つの国内大会(関西パフォーマンス大会・高槻大道芸グランプリ)で優勝している。

 それらのタイトルにふさわしい実力を大道芸ワールドカップでもいかんなく披露した大型新人の登場に、思わず「来年もぜひ大道芸ワールドカップに来てくださいっ!期待しています!」とお願い。

 まえぴ~さんはそれに応えるような力強い声で「もちろん来ます。来年も応募しますっ!」と言ってくれた。

 ちなみに、今年まえぴ~さんはソロで出場しているが、実は彼女には長年ユニットで活動している2人の仲間がいる。できれば来年はユニットの演技も静岡で観たい。そんな思いを胸にエスパルスドリーム会場を後にしたAだった。

 黄色が似合うフープの妖精(まえぴ~)さん、来年もお待ちしています♪

(広報スタッフA)

2023フェスティバルレポート / アーティスト オンステージ
2023/11/03 11:05 PM
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