Festival Report フェスティバル レポート 2016

"Simple is the best" ~池田洋介~

池田洋介のパフォーマンスは、活字のモノローグで始まる。



「シネマパラダイス」の美しい旋律が響く中、物言わぬ活字から胸が痛くなるような切ないフレーズが次々とこぼれ落ち、しんと静まり返った観客がかたずを呑んで見守る中静かにモノローグが終わると、リズミカルなミュージックに乗せて彼の動作が速くなる。



メトロノームの規則正しい響きにぴたりと動きを合わせたパントマイムは、まったく無駄がない。にもかかわらず、どこか遊んでいるかのようなユーモアたっぷりの演技で子ども達を爆笑の渦に巻き込む。



プレート、ボックス、パラソルなど小道具を駆使したマイムに、3つの帽子がふわりと宙を舞い踊るハットジャグリング。美しい音楽をBGMに彼の動きは緩急交えながらよどみなく続き、やがて最大の見せ場である"Hello Goodbye"が始まる。



"Hello Goodbye"は、彼が世界デビューするきっかけとなったパフォーマンスだ。
ビートルズの名曲に乗せて彼の手の上で操られる活字達は、まるで生きているかのように自在に踊りだし、観ているこちらまで一緒に踊りたくなる。そんな言葉と戯れるかのような楽しい時間の後、今度は冒頭と同じモノローグが逆の順番で始まり、幕が静かに閉じた。



"Simple is the best."
ありふれた日常の風景にヒントを得た彼のパントマイムはとてもシンプルでわかりやすい。そして極限まで簡素化された動作がかえってすがすがしく美しい。さらにBGMで流れる名曲の旋律がさらに美しくステージを彩り、観客はまるで清流で心も体も洗い流されたような心地よい余韻に浸るのだ。



そんなシンプルで美しい池田洋介の極上のパフォーマンスをぜひお見逃しなく!

Written by Atsumi

2016フェスティバルレポート / アーティスト オン部門
2016/11/05 07:32 PM
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